その他(アレルギー性鼻炎類似疾患・小児アレルギー性鼻炎等

その他のアレルギー症状

口腔アレルギー症候群 (oral allergy syndrome: OAS)

花粉やラテックス(ゴム樹液など)に反応する抗体が、本来なら反応しないはずの別のものである食べ物にも同様に反応してしまい、さまざまなアレルギー反応をおこすものをOASといいます。
果物や野菜が多いといわれています。たとえばシラカバ花粉症では、このOASが合併する割合は約40%と言われており、バラ科の果物であるリンゴ・サクランボ・モモ・ナシなどを食べることによって起こるといわれています。スギはシラカバより少なくなりますが7~17%くらいの頻度で、トマトに対してアレルギー反応が起こることがあります。
症状としては、唇や口・喉の中のかゆみ、刺激感や腫れぼったい感じといった、咽頭口腔症状が7~8割ほどの頻度で見られます。他に喘息などの呼吸器症状、蕁麻疹などの皮膚症状、腹痛・下痢などの胃腸症状が出ることもあります。呼吸困難・血圧低下・意識障害といったアナフィラキシーショックを起こすこともあります。
花粉症があるからといって、必ずOASになるわけでありませんが、無い人とくらべて頻度は増えますので、注意が必要です。

アレルギー性鼻炎に類似した疾患

(1)好酸球増多性鼻炎(こうさんきゅうぞうたせいびえん)

くしゃみ, 鼻水, 鼻づまりを主訴とする疾患を鼻過敏症といいますが、そのなかの代表的疾患はアレルギー性鼻炎です。鼻過敏症の大半はアレルギー性鼻炎と診断可能なのですが, 中にはアレルギーの診断がつかない方がいます。いわゆる非アレルギー性鼻炎です。これらは, 副鼻腔炎と診断されたり、血管運動性鼻炎(※下記)として治療が行われるケースもあります。

しかし、その中で鼻汁中好酸球増多を認めるケースが存在することがわかりました。これが好酸球増多性鼻炎です。鼻過敏症の約2%を占めていると言われています。くしゃみ, 鼻水, 鼻づまりなどのアレルギー性鼻炎の症状はありますが, 鼻づまりの原因となる薬物の使用がなく、血液検査(RAST法)や皮膚での検査で抗原を見出だせず、鼻汁好酸球検査のみ陽性の疾患です(鼻汁スメアー細胞中20%以上の好酸球増多)。眼のかゆみなど他のアレルギー症状は合併しません。

治療法はアレルギー性鼻炎と同様に抗アレルギー薬を内服したり、ステロイド噴霧点鼻薬を使用したりします。特にステロイド噴霧点鼻薬が有効です(抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬が無効との報告があります)。これらで効果がなければ下鼻甲介レーザー手術やアルゴンプラズマ凝固手術も検討します。

(2)血管運動性鼻炎

鼻アレルギーのガイドラインで、非アレルギー性の鼻過敏症に分類されていて、「アレルギー性鼻炎と症状は類似するが、アレルギー検査でアレルギーが証明されないもの」と述べられています。このように,アレルギー反応の関与が証明できず、病気の原因がはっきりしないものの、鼻粘膜の自律神経の異常によって、くしゃみ、鼻水、鼻づまりといった、アレルギー性鼻炎と同じ症状を示す病気です。

寒冷などの気温変化(暖かい部屋から出て、外の冷たい空気に触れるなど)、タバコの煙や化粧品の吸入、飲酒、精神的ストレス、妊娠などが刺激となり、鼻の自律神経のバランスが崩れておこると考えられていますが、はっきりした原因は不明です。40才以上の成人発症が多いようです。

アレルギー反応でおこっているものではないので、症状を抑える対症療法が主体になります。抗ヒスタミン薬(特に抗コリン作用のある第一世代の抗ヒスタミン薬)、自律神経薬やステロイド噴霧点媚薬などを使用します。漢方薬を使用することもあります。これらで効果がなければ下鼻甲介レーザー手術やアルゴンプラズマ凝固手術も検討します。鼻水に対しては、以前は副交感神経を切断するビディアン神経切断術が行なわれていましたが、ドライアイなどの合併症があるので、現在は積極的に行なわれていません。最近はより合併症の少ない後鼻神経切断術が主流となってきています。

抗コリン作用・・・副交感神経抑制作用のこと。

(3)慢性鼻炎

慢性鼻炎とは長期間、鼻の粘膜に生じる慢性の炎症です。慢性鼻炎は、とくに鼻甲介の粘膜が病的に腫脹し、空気の通りみちが狭くなり、鼻づまりや鼻水が多くなった状態で、原因として、鼻中隔の曲がりや鼻甲介の形態不良、外界からの機械的・物理的な刺激、周囲組織疾患(とくに副鼻腔炎)、糖尿病や肝臓・血液・心疾患によるうっ血(体の一部に,静脈の血が異常に多くたまった状態)、その他体質的要因など様々なことが関係していると考えられています。また慢性鼻炎は、刺激性のガスの出やすい化学工場や、粉塵の多い場所で仕事をする人に多い傾向があるとの報告があります。
主な症状は鼻水、鼻づまり、頭が重い感じ、嗅覚低下、鼻水がのどに落ちる感じ(後鼻漏)、痰や咳などです。
慢性鼻炎は、体質的な問題や、生活環境の問題があるため、なかなか症状をおさえることが難しいと言うのが本音です。
体質を変えたり、生活環境を変えることは実際には難しいため、治療法は対症療法となります。抗ヒスタミン薬(鼻水止め)の内服やステロイド噴霧点媚薬の使用、時に漢方薬も使用します。ネブライザー治療も人によっては効果があります。また刺激性ガスや粉塵など、原因が明らかなものは、それを取り除くためにマスクを装着することも必要です。これらで効果がなければ下鼻甲介レーザー手術やアルゴンプラズマ凝固手術も検討します。
なお、初期の急性鼻炎(鼻かぜ)もアレルギー性鼻炎と紛らわしいケースが多々あります。

(4)その他の鼻炎

アレルギー性鼻炎以外のいわゆる「鼻炎」には上記の好酸球増多性鼻炎、血管運動性鼻炎の他に、加齢による老人性鼻炎、寒い空気が鼻に入っただけで鼻が水のような鼻水が出る冷気吸入性鼻炎(スキーヤー鼻)、ラーメン、うどん、カレーライスなど刺激のある熱い物を食べた時に鼻水が出る味覚性鼻炎、市販の点鼻薬(血管収縮薬:ナファゾリンなど)の使い過ぎ、降圧薬・向精神薬などの長期内服による薬剤性鼻炎、乾燥した空気と暖房によって鼻の中が乾燥し、症状が出る乾燥性鼻炎、うつ病や神経症、ストレスによる心因性鼻炎、妊娠中期以降に女性ホルモンの影響と考えられている妊娠性鼻炎、身体,特に手足の寒冷刺激を介する反射性の鼻粘膜容積血管拡張によるものと考えられている寒冷性鼻炎、職業性にみられることが多い粘膜の物理的,化学的な急性,慢性の刺激による刺激性鼻炎、放射線治療に合併する放射性鼻炎もアレルギー性鼻炎と紛らわしい疾患です。経験上、高齢者の方はアレルギー性鼻炎のケースをのぞくと、「鼻炎」の患者さんとして多い感じがいたします(老人性鼻炎と思われます)。治して差し上げたいのですが、若返りの薬はこの世には存在しないので完治させることはなかなか困難です・・・。

小児のアレルギー性鼻炎について

アレルギー疾患は世界的に増加傾向です。小児のアレルギー性鼻炎は従来、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、アトピー型小児気管支ぜんそくとの関連が強く、アトピーマーチと表現され、学童期以降に発症すると言われていました。しかし、近年アレルギー性鼻炎の低年齢化が進んでいて、小児気管支ぜんそくより先に発症するとの報告が出ています。さらには驚くべきことに1歳6ヶ月検診で、その約1.5パーセントにアレルギー性鼻炎が認められたとの報告もあります。 アレルギー性鼻炎の低年齢化と増加の原因は様々な意見があり、どれが本当の原因かというとはっきりしないと言うのが本音です(研究者によって言うことが異なります)。最近では住宅環境の変化、食生活・生活習慣の変化が一番の原因だと言われています。またスギ花粉症に関しては戦後の積極的な植林によるスギの増加が原因とされています。

住宅の気密化や冷暖房の完備によるダニの増加、植林したスギが利用されず、樹齢30年を越えたスギ(樹齢30年以上のスギは花粉飛散量が多い)が増加したことなどでアレルギーの元になる抗原(スギ花粉やダニ・ハウスダストなど)に曝露される機会が増え、もともとアレルギーを発症しやすい遺伝性素因があった小児に、悪影響が出ていると考えられてます。また一部に衛生仮説※下記やディーゼル排気微粒子などによる大気汚染説もあります。

衛生仮説・・・綺麗すぎる環境が良くないという説。有名なのは体から寄生虫がいなくなったからだという説。この説を肯定する研究者と否定する研究者がいて真相ははっきりしていない。

小児の体は大人とは違うので、治療は難しいものがあります。大人と同じ治療を安易に行うことは禁物なのです。残念なことになかなか薬が効かないからと言って、ステロイドの内服(セレスタミンなど)を処方する医師もいるようです。ステロイドの噴霧型点鼻薬は鼻内という局所にしか作用しないので安全性は高く、正しく使用すればほとんど問題ないのですが、ステロイドを内服させることは体内のホルモンに異常をきたすことが多々あるため、成長期の小児にとってはかなり問題となります(もちろん大人の方でも中長期のステロイドの安易な内服は問題ですし、ましてやステロイドの筋肉注射などは重篤な合併症をきたすため論外です)。

現在は様々な小児用の内服抗アレルギー薬やステロイド噴霧型点鼻薬が発売されているために、以前よりはぐっと治療が楽になりました。

ただし、完全に症状を止めることが困難なケースも多々あります。それはアレルギーの原因となる物質(花粉やダニ・ハウスダストなど)を完全に小児から排除することができないことや、大人に比べると使用できる薬の種類がまだ少ないからです。

親御さんの希望で完全に症状を止めたいからと言って、強い鼻水止めを内服させると今度は眠気などの副作用が出てしまい、小児にとって大事な学業や運動を行う園や学校などの集団生活に支障をきたし、小児の成長に悪影響を与えてしまいます。
かといって、アレルギー性鼻炎の治癒が期待できる今話題の舌下免疫療法も11歳以下の小児には適応が無い上、通年性アレルギー性鼻炎には効果がはっきりしていません(全身アナフィラキシー※下記というリスクもあります)。

全身アナフィラキシー・・・呼吸困難、全身紅潮、血管浮腫(顔面浮腫、喉頭浮腫等)、蕁麻疹のうち、複数が合わせて発現した全身的の症状。アレルギー性と考えられる急性で重篤な呼吸困難のこと。

なお、レーザーやアルゴンプラズマ凝固法による手術療法を希望される方もみえますが、リスクや小児の協力性を考えると6歳以下は行わない方が良いと思われます(当院ではリスクを考え、10歳以上の小児に対してしか手術療法を行いません。9歳以下の小児に対しては原則として、入院設備のある病院をご紹介いたします)。

小児のアレルギー性鼻炎の治療のまず第一におこなうことは、ダニやハウスダスト(ホコリ)、スギ花粉などのアレルギー抗原からの回避です。
よって、強引に症状を止めるのではなく、快適に日常生活が送れるように導いてあげなくてはなりません。

耳鼻科受診は面倒だ、病院の処方薬は効きが悪い、即効性が無い、まずい、もしくは副作用が怖いと、市販薬を購入して飲ませている親御さんもみえますが、頻用している小児用の市販薬のほとんどは眠気や興奮・けいれんなど副作用の強い第1世代の抗ヒスタミン薬なので、安易に自己判断で飲ませず、耳鼻咽喉科専門医を受診して頂きたいと思います。

小児の場合、アレルギー性鼻炎があると副鼻腔炎の合併も頻繁に認められるため、なるべく早期に受診していただきたいと思います。また最近は1ヶ月以上の抗アレルギー薬の長期処方を希望する方も多いのですが、大人と違い小児の場合は副作用や合併症の問題もあり、受診時になるべく早期に発見する必要がありますので、お忙しいことは重々承知していますが、症状が重い場合は1、2週間に一度は診せていただきたいと思います。

検査も鼻に棒を入れて鼻水を採取する鼻汁好酸球検査を行うことが必要になることもありますし、生活や内服指導のために採血を行ってアレルギーの原因物質を調べることが必要のケースもあります。それらの検査は小さなお子様にとって痛みや恐怖を伴うこともあります。しかし、必要な検査は行わなければなりませんし、逆に緊急性がなければ、暴れるなどして小児の協力が得られない場合は一時、検査を見送ることも必要です。
「今度はちゃんと検査をしようね♡」と言えば、お子さんも気持ちが落ち着いて、次回はちゃんと検査が受けることができるケースがほとんどです。焦りは禁物です(笑)。

アレルギー性鼻炎の治療と診断には小児の患者さんだけでなく、親御さんのご理解とご協力も必要です。